夜道を歩きながら、身体から欲望が抜けていくのを感じていた。
理央はしばらく体を僕に押し付け、目をつむり…ふいに離れて笑った。
「英士、これは「夢」だよ…いや君の勝手な「妄想」だからね?
…じゃあ、俺いくよ」
あっという間に彼は闇に消えて、遠くで扉の閉まる音が聞こえた。
そして僕の上着のポケットには、この館の鍵が忍び込んでいた。
その鍵をポケットのなかで弄びながら、帰路を進む。
僕は抑えがたい好奇心をたぎらせていた。
嫌いになってくれてありがとうだって?
全く…わからない。
理央には何かある。
刹那の快楽に身を委ねているときでさえ、悲しみと怒りを感じていた。
憑かれたように淫らな肢体からそれを受け取っていた
理央、小早川理央。
もうそれだけだ。
僕の体は、心は、その存在のみが支配している。
繋がったのは身体だけだとわかっている。
だからこそ、欲しい。
小早川理央の全てが欲しい…。