守は妻のそんな不貞に気付くこともなく、自らもまた不貞にのめり込んでいた。
「成美さん、大丈夫でしたか?」
守は成美と自分の着替えをホテルから支社に持ってきていた。
「守さん遅い!…珈琲、せっかく淹れたんですけど」
「あ…す…すみません」
「冗談です。淹れたてです、どうぞ」
「自販機も、使えないと大変ですね」
「ええ、でも……」
「?」
成美は守の隣に椅子を持ってきて、
彼に寄りかかった。
「あなたを待ちながら珈琲を淹れてる時間が……とても心地よかった」
守は成美の頭を抱き寄せ、同時に罪悪感に苛まれた。
いっそのこと忘れたくなった。
―美紀……………―\r
守には成美のシャンプーの香りが、心地よかった。
「成美…………ここにいる間だけ……だから…」
「構いません…………………だから」
「?」
「ここにいる間は、私だけ見てて………ください………」
守はタオルにくるまれた少女のような成美を、もう一度抱きたくなった。
「ね?」
「成美……………ホテル、同じ部屋にしようか…?」
「……馬鹿」
「だめかな」
「…………………いい」
悶々としたまま2人は作業を終え、
その頃にはすっかり夜になっていた。
「やれるもんですね…ああ、疲れた」
「ホテルに帰りましょうか」