真っ黒な少年が入り口に立っている。
白い肌が、一際目立ち儚いくらい華奢だ。
僕は静かに彼を眺めていた
彼は僕に気づいて、笑みのない目を瞬かせた。
しん、とした朝に見つめあう僕らはそこに緊張の糸が張られていくのが見えるよう。
理央は直感で、いつもの逢瀬…情欲だけの逢い引きとは違うと理解した様子。
僕は黙って鍵穴に差し込み滑りこんだ。
理央も続く…。
薄暗い部屋に僕らは佇んでいた。
小さな微笑をみせ、理央が近づく。
「英士?」
僕は呟いた。
たった一言。
「春臣」
瞬間、微笑は凍り…理央は口元を手で覆った。
叫び声を飲み込んだように
「な…」
小早川春臣
理央の兄。
僕は賭けに出ていた。
理央の言葉の意味はきっとここに隠されていると。
理央はゆっくり僕に背を向け…床にうずくまった。
小さく、縮こまる。
小さく…小さく。
耳を両手で覆い、消えてしまいたいように。
僕は回り込み、理央の向かいにしゃがみこんだ。
「殺人未遂で捕まったね…三年前」
理央は塞いだ両手を外し僕を見つめた。
初めて人がいるのを認識したかのような表情で。