小早川は、僕をまっすぐみた。
僕も、まっすぐ見つめ返した。
「英士がね。俺を見つめていた時から…いつか俺は君に話してしまうだろうって感じてたんだ。
誰かに、言ってしまいたいと。
俺の…話を」
小早川の、今までの捉えどころのない茶化すような声音が消えた。
凛とした声。
僕は小早川の向かいに座り込んだ。
「春臣は…血は繋がらない兄で…」
理央の目から、予告なく涙が落ちた。
「父さんの連れ子で…僕とは五つ離れていた。
始め…彼と母さんと父さんだけの家族だったころは…幸せだったらしいんだ。
僕、いや、俺が生まれて…母さんは兄さんに無関心になって…父さんも…俺に夢中になったんだ。
に、兄さんが17の時に…僕は…兄さんに…」
俺から僕に。
小早川はより、幼く…消えてしまいそうに幼く。
僕は聞いていた。
そう、「告白」を。
「犯されて。毎日、毎日、毎日僕は言われた。
お前さえいなければ、お前さえ生まれなければ。
僕は…兄さんが…憎くて、こ、殺したいくらいに…」
「そして、ぼ…僕は。
僕は…母さんを、刺したんだ。包丁で刺した。全部、消すつもりで」
僕は目を閉じた。