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予感 33

輪廻  2010-10-23投稿
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「ええ、これで全行程完了です。…ええ…じゃあ現地解散で…はい、お疲れ様です」

守はため息をつき、携帯電話の電源を切った。

あれから6日後、結局全日程を費やした守と成美は、予定通り飛行機で帰る事にしていた。
出発前夜の今日まで、2人は距離を置いたままだった。

「成美さん、寝台にしませんか」

ホテルで荷物をまとめていた2人は決めかねていた。

「そんな。これから飛行機のチケットをとらないと…もう間に合わな…?!」

成美をベッドに押し倒して、守は訊いた。

「最後だけ、わがままきいてくれませんか」

成美は顔を背けたが、守に向き直って、小さく頷いた。

「ありがとうございます」




寝台特急は嘘のように空いていた。
成美は少し疲れたように窓に寄り添って、ゆっくり動き出した景色を眺めていた。


「飛行機ならあっという間なんですね…この景色も。
…見ることもないのかな」

守は温かい珈琲を紙コップに淹れ、
成美に手渡した。

「ありがとうございます、あつっ…ふふ。ごめんなさい。

……雨の日から気温が下がって、
空気がぴんってしている気がします。
冬がくるんですかね…」

「ええ…」

「………あったかい家があって、お父さんとお母さんがいて、クリスマスにはクリスマスケーキがあって、大晦日には新年を祝って…。子供の頃の冬ってどうしてあんなにわくわくしてたんでしょうね…」

珈琲を啜りながら守は頷いた。

「………私はそういう普通の冬を迎えたいと思っています」

「………」

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