「ああっ……。はぁ…はぁ…はぁ…」
成美は自分の中に浸透していく感触に、満足していた。
「美紀とは……帰ったら話をつけるよ」
「はい……」
「不思議だ……なんで始めからこうしなかったんだろう……」
「でも最後には……こうすることが決まっていたんですね……」
「美紀…………愛してる…けど、
一週間て約束だろ?」
「嘘………………」
美紀の胸に何かが置かれた感覚だった。
次第に感覚として伝わり、
それは美紀の全てを停止せしめた。
「¨功一郎¨って名前の
¨19歳の学生¨っていう
¨設定¨。
良かった?
バイバイ、美紀」
男は黒いジャンパーを羽織り、
部屋から消えた。
全てを知った守が、成美と共に会社を去るのはこの数日後のことだった。
一年後。
「ほら、お父さん帰ってきたよ」
「おかえんなさあい!」
「良い子にしてたか?」
守、成美、娘の3人は、クリスマスケーキを囲んでいた。
美紀の死がなんだったのか、
守には知る由もない。
そしておそらく、
自分にとってそれはどうする事もできないものだったのではないかと、
守自身、気付いていた。
美紀と守は、互いを愛してはいたが、
それが自らを満足させる愛ではないと、
互いに気付いていたからだ。
最後にはこうなると決まっていたならば、美紀と守の出会いがなんだったのか。
答えは誰にも見つけられない。
完