指に力がこもっていく。
白い首筋に食い込んでいく
自分のものにならないならいっそこうして…。
全てを手に入れる為にはこうするしかない。
でも。
本当にそうだろうか?
力を入れた僕の手首を労るかのように、そっと理央の指が触れた。
僕は…。
震える両手を離した。
そして、倒れるように咳きこんで壁にもたれた理央を引き寄せ
思い切り平手打ちにした。
空気を切り裂く音。
理央の唇が切れた。
驚きで目を見開く彼。
「僕を利用して死ぬのか」
理央は頷いた。
「英士…僕は謝らない。愛しているなら犠牲だと思わないで。僕の全てをあげるよ…だから」
殺してよ…と掠れた声で囁いて、理央は泣き崩れた。
踞る理央を無理やり立たせ壁に押し付ける。
「お前のなかに、「僕」は一度もいないの?
いなかったと…そう言うのかよ?」
理央は涙をためた目を逸らす。
「クラスでのお前も皆芝居だと…一欠片のお前自身もいなかったと…」
僕は自分が泣いているのに気づいた。
何故だろう、何故こんなに…。
悔しいんだ?
僕は強く…骨が砕ければいいと願う程強く、理央を抱き締めた。