「僕は…ねえ、英士…」
息も出来ないくらい、強く理央を抱き締めていた。
「僕は…春臣を…愛せなかったんだ。
ずっとずっと憎んでいたんだよ…。
彼の悲しみを理解できずに…僕を犯し、憎む彼をひたすら嫌って。
母さんや父さんが彼を無視するのを気にも止めずに甘やかされていた癖に。
僕を…愛してくれていたと…気づいた時にはもう…
と、取り返しが…つかなくて…
何もかもを終わりにしたかったのに、僕は生きてる」
理央は少し緩められた僕を見上げ微笑んだ。
「英士…僕をみる君の目に、僕は惹かれた。
怖くて…僕の本性を知られているんじゃないかって。臆病で、汚らわしい、身勝手な僕を…。
だけど…だけどね…君が欲しいんだ。
人を好きになっちゃいけないのに、どうしようもなく好きになった。
僕は春臣をあんな目に合わせたのに。
春臣は僕に殺されたも同然なのに。
だから…愛している人に僕も…」
理央は猫のようにしなやかに僕の腕から逃れた。
「君を殺人者にしても、僕は後悔しなかったよ。
そういう人間だからさ」
僕は胸が痛かった。
理央…理央、なぜ、
これで「終わり」な気がするんだろう…。