三人の入学式の翌日から、父親も引っ越した。
初めての三人だけの週末だった。
蓮一は引っ越し作業の疲れもあり、気持ち良く寝ていたが、体が急に重くなった。
「ん……んん……ん?」
金縛りのような感覚に目が覚める。
「おはよ、蓮兄ぃ」
「お前、なに、入ってきてんだ!人の部屋…うぷっ」
「しーっ。今、真希が朝シャンしてるから」
「?だ…だから?」
「ほらっ、聴こえない?真希の歌………」
「あ………ほんとだ」
真希は日ごろからあまり感情などを表に出さないが、唯一、家族が早く起きない休日に朝風呂に入り、歌を口ずさむことがあった。
真菜はこれを盗み聴きするのを楽しみとしていた。
「ね。………朝シャンの時だけ歌ってるんだよ」
「初めて聴いた……」
聴いたことがない、真希のか細く、高い、美しい歌声がバスルームから届いていた。
「ふつうの声もこんななら可愛いのにね」
「お前、そんなことより…離れてくれよ」
真菜の胸と蓮一の腕が密着し、
真菜の手は蓮一の脚の間に置かれていた。