「風介、待てよ」
「やーだね、捕まえてごらん」
あはははは、うふふふふ。
時は11月。
キラキラ光る波打ち際で俺たちは追いかけっこ。
はしゃぐアイツの笑顔が眩しくて、手を翳す。
「つーかまえたっ♪」
俺の足が砂で縺れ、転びそうになり…支えようとした風介もろとも倒れ込む。
どさっ。
「双葉(ふたば)…」
俺の名前を読んでジッと見据えられ…俺は…俺は…
「……クッ…」
「…ブ」
風介と俺は転がって、砂まみれになりつつ爆笑していた。
背後から怒りに満ちた声が轟く。
「てめーら、ふざけんなっ真面目にやれっ!!!」
風介はヒイヒイ笑いながら舌を出した。
「わりぃ…で、でもさ」
俺ものたうちまわって止まらない笑いを抑える。
「だ、だ、だめだってえ〜ふ、風介、唇震えてたろ?あれで俺、もー…」
「いやいやいや、ちがうっしょ、おめーのマバタキが尋常じゃねーから…」
お互いがお互いに罪をなすりあっていたところを、バコッと丸めた台本でぶったたかれた。
「このバカ共が!何度テイクすりゃいーんだっ」
映研の響先輩だ。
今回の、「腐わ腐わ」の監督兼脚本家兼演出担当なわけで。