「んなこっと言われてもぉ〜あ、それそれ♪」
俺たちは砂にまみれた体を清めるべく、風介の家に向かっていた。
チャラ男を絵に書いたような風介だが、中身は、本物のバカだ。
うちの高校のスポーツ特待生で、足は無駄に早い。
で、頭はからっきし。
「おっとこどぉーしは、魅惑のせ〜かい〜♪」
…。
変な歌を全力で歌う。
まあ、よかろう。
しかし…始めにキャストのオファーが来たのは風介だ
見てくれは何しろ抜群。 中身がスッカラカンでも、冗談みたいにモテる奴。 茶髪禁止の規則にて黒髪だらけの我が校で、地毛で柔らかな栗色の髪。
口角の上がった、可愛いらしいと言われている顔。 毎日女子の誰それに、アドレス聞かれたりしている。
で、当の本人も
「やだー、また聞かれちゃった、もう迷惑メールの勢いだぜ」
とか言ってクラスの男子から殺意の眼差しを受けている。
そんな風介が、腐ムービーで白羽の矢が立つのは納得なんだ。
問題はなんで、相手が俺なんだっての!
「なあ!」
たらいまー、と誰もいない家に元気に入っていく風介の襟首を掴む。
「なんでお前、俺を推薦したわけ?」
「ん?」