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さよならは五分前 9

にゃんこ  2010-11-23投稿
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「あ、あそこに明かりついた家が…」

簓の指し示す先に、こぢんまりした民家。

「…考えてみりゃ俺の家に行っても良かったんだ」

そう思いながらも、海斗の本心は違っていた。

人。

動いている人間を見たかったのだ。

羽虫のように光に導かれながら、恐れていた。
簓はホッとしたように、確かな足取りで民家に向かう

海斗の心臓が狂ったように鳴り始めた。

大丈夫、大丈夫だ。
誰かがいる。
いるに決まってる。

「矢倉さん、鳴らしますよ…?」

インターホンに指を乗せたまま怪訝な顔で聞いてくる簓に頷いた。

俺は一体、何を恐れてるんだ!

三輪車や枯れかけた鉢植えやら、汚れた小人やらが佇んでいる玄関先。
小さなプラスチックのバットが立て掛けてある。

明らかに子供がいる家庭らしい。

簓がチャイムを鳴らす…。
しばらく待つ。

応答なし。

もう一度…さらに、もう一度…。

痺れを切らし、海斗はドアを乱暴に叩いた。
「すみません!誰かいませんか?」

ノブを掴み捻る…と他愛なくそれは開いてしまった。
二人は顔を見合わせた。
海斗は、乾いた唇をしめらせた。

どうする…。

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