「お前が居酒屋入るの見えたから、良い機会出し詫びようとしたんだ。…なのにお前は呑気に俺の事、
鬼畜だとかトラウマもんだとかしまいには、顏も見たくないとか言いやがるし…」
え?嘘
…俺。そんな事言ってたっけ…
ヘコんでたし、適当言ってただけに記憶が無い。
「…それ顏も見れないの間違いじゃ…」
うん。次会う時どんな顏して会社行けばいいんだろうとは思ってたし…
「別に良いよ。お前、俺が嫌いなんだろ?」
…………
……ちょっと待って。
どしたの所長。何かオカシイ。変な事言ってない?
「俺、所長の事嫌いなんて言ってませんけど…」
「いいってだから。…てか…気分悪い…」
『いい』ってナニ?
よくない
いいわけない
少なくとも俺はいいなんて思わない
「そりゃ見放された気でいたしショックで適当グチってたかもしんないですけど。
俺があれだけヘコんだの何でだか知らないでしょ」
所長に何言われたって怒鳴られたって恐怖を感じたことはなかった。
寧ろ…。俺は。
待て待て待て、俺。
今何言おうとしてる?
「…?佐木…?」
所長の肌は白くて
でも熱かった
アルコールの匂いがただよう口ん中に
ほんの少し甘いカルーアミルクの味
所長を連れて帰ってきた時から俺は
「俺、大好きなんですよ。アンタの事が」
チャンスだと思ってた。