涼子とヒロキはシャワーを浴びていた。
ただ無言でお互いの体を流す。
目を合わせようともしなかった。
何か喋ると今起きたことを思い出してしまう気がして、涼子は怖かった。
何度かヒロキは口を開いたが、母の表情を見ると、言い出せなくなってしまう。
ネグリジェをまとい、ヒロキもパジャマに着替えた。
まったく会話もなく、リビングの電気を消した涼子。
仕方なく、部屋に戻ろうと階段に向かう。
「ヒロキ・・・」
やっと涼子が口を開いた。
「なに?」
「女の子との時・・避妊だけはちゃんとしなさい」
ヒロキはじっと涼子を見た。
涼子はまだ目を合わせたがらないが、真面目な顔だった。
ヒロキの不安な声が何かを言い出す前に、涼子は言った。
「安心しなさい。でも今日はたまたま・・・」
今起こったことについて、多くを語りたくなかった。
ヒロキもそんな母の葛藤を何となく理解した。
涼子は無理やり作った笑顔で言った。
「もう遅いわ。お休みなさい」