翌日。
夫のアキラは昼過ぎに帰って来た。
ヒロキが学校から帰ると、涼子はいつもの母親に戻っていた。
それは痛々しいほどの努力でそう取り繕っているのか、夫の顔を見た途端に目が覚めたのかわからない。
しかし、ヒロキがズルズルとゆうべの事を考える暇もないほど、涼子は笑顔で振る舞った。
あれは・・・夢だったのか?・・・
いや、そうではない。
いつもはリビングで夜更かしをする涼子。
今夜は早々と寝室に戻った。
アキラはもう50過ぎた。
友達が興味を持つようなことは、残念ながらないようだ。
実はヒロキもドキドキしながら寝室の様子を伺ったことがあるのだが、それらしい気配も今までなかった。
しかし、同じベッドに寝る夫婦。
自分にはわからない、それなりの絆があるのだろう。
涼子はアキラの横顔を見ていた。
「どうした・・・」
「ううん・・・」
夫に甘えたところで、何もありはしないだろう。
ただ、ゆうべのことを打ち消すことができないものか、と涼子は考えている。
消せるはずもないのに・・・
あなた・・・ごめんなさい
心の中で呟いた。