学校。
それは僕にとって、最悪な時間を過ごす一時。
皆で僕をはぶる……皆で僕の陰口を言う……そんなのには、もう免疫がついた。
別に何とも思わなくなった。
だけど、何度されても慣れることが出来ないものがある。
「心配したよ〜?二週間も学校に来ないからさ〜、てっきり自殺しちゃったんじゃないかと思ったよ」
言葉の後に、僕を取り囲んでいる奴らが一斉に笑い声をあげた。
こいつらの名前なんて知らない。
只の馬鹿どもだ。
自分より弱い者を虐める事によって、ちっぽけな自分達が少しでも浮かばれた気になるんだろ?
「無理無理、コイツに自殺する勇気なんてある訳ねーもん」
御託(ごたく)はいいから、さっさと殴れよ。
「まぁまぁ、僕の友達を虐めるのはやめてくれよ」
「友達じゃなくて、サンドバッグだろ?」
一際大きい笑いがおこる。
瞬間、僕のみぞおちに鈍く重い痛みが走りぬけた。
「ぐぁ……」
僕の体が『く』の字に折りまがる。
呼吸が出来ない。
「よっしゃ次、俺の番!」
ドゴっ!
休む暇もなく、新しい衝撃が腹を突き抜けていく。
あいつらは、絶対に顔は狙わない。
教員に虐めがバレない様に、腹を集中的に殴る。
「まだ、倒れるのは早いよ〜!」
崩れ落ちる僕の体を、髪の毛を真上に引っ張る事によって制止させた不良は、勢いよく右の拳を僕の脇腹にほうり込む。
ズガッ!
「う……ぁ」
回りの奴らが、「おぉ〜」と歓声をあげる。
それと同時に僕の体は石の石像の様に、体育倉庫のひんやりと冷たい床に倒れおちた。
あいつ……あの黒猫。
大丈夫かな?
……大丈夫だよな?
シローは……名医だし。
マウアの奴……ちゃんと留守番してっかな?
「もう、おやすみですか〜?もうちょっと遊ぼうよ」
無理矢理、立ち上がらせられる。
そして、一人の不良に背中から羽交い締めにされ、もう一人の不良が僕の腹を両手で殴りつけはじめた。
「おらぁ、百烈拳!」
笑い声と共に拳をほうり込む不良のふざけた顔。
この時間に終わりなど、ない。
僕は、そう感じていた。
これだけは……やっぱ慣れる事ができないな。