ヒロキは丁度駅に降り立ったところだった。
今日は塾の日。
普段なら帰宅して着替えを済ませ、軽く何かを腹に入れる。
涼子が塾まで車で送ってくれるからのんびり構えていられた。
ん?
涼子からのメールだった。
『ごめん。体調が悪くて寝てます。今日は塾に送ってあげられないの』
ヒロキは時計を見た。
それなら着替えだけ済ませてすぐ出なければ間に合わない。
『わかったよ。着替えだけしたらすぐに出る』
『ごめんね。声だけ掛けて。起きれないと思うけど。』
『そうする。寝てていいからね』
涼子は、熱く込み上げた思いを、散りばめたハートマークに込めて息子に送った。
そんな涼子の後ろ姿をカイトはベッドで見つめていた。
夕日に当たる涼子のシルエットは、ただため息が出るほど美しい。
息子を思う母の優しさが、体全体に滲み出ていた。
「ごめん・・・おばさん」
つい、そう言ってしまった。
「息子には・・知られたくない。・・わかってくれるよね?」
潤んだ瞳が、一心にカイトの目に訴えた。