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さよならは五分前 24

ゆーこ  2011-01-05投稿
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文字通り足は棒になり、頑なにこれ以上動くのを拒んだ。

海斗は引きずるように歩いて…

アパートの前に戻った時、そのドアの横にうずくまる簓を見つけた。

「…簓」

声に顔をあげ、驚いたような顔をしてみせた簓を
海斗はいま出来る精一杯の力で抱き締めた。
座り込んだ形で、触れるのも怖いように抱き締めた。
疲れてて、幻を見てる気さえする。

が、伝わる手応えは本物で鼻先をくすぐる髪も、やっぱり本物で。

「簓」

額と額を合わせて呟く。
「うん」

囁くように小さな声で、簓が答えた。

答えた…。

「行くとこ、ないんだよ。悔しいけど俺…ここしか…ないんだ」

しゃくりあげながら、海斗の服を掴む。

「あんなことされて、どうしたらいいかわかるわけないじゃん。どんな顔したらいいの?」

「好きだ」

目を丸くして、その言葉を飲み込んだ簓は、ちょっと皮肉な目で笑った。

「繋がってないよ、話」

「好きなんだ」

今度は、戸惑い。

「矢倉さん、俺は…」

「お前が俺を嫌いでも男でも好きだ。仕方がないし離さない」

今度は紛れもなく
簓は声をあげて笑った。 太陽みたいに。

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