部屋に入り、ぎこちなくしか動かせない足をソファーで休めた。
海斗は簓を見つめ、その視線に気付き困惑しているような表情をさらに眺めた。
キスしたい、と思っていた
「まだ…許したわけじゃないんだ」
「わかってる」
簓は僅かに苛立った様子で隣に腰かけた。
「…心配、した?」
「ああ」
なんだよ、余裕みたいな顔してさ。
簓が黙ってると、不意に海斗はくるりと向き合った。
「なんで泣いた?」
その目が余りにも真剣だから、簓は答えに窮して唇を舐めた。
「さあ」
海斗がくすりと笑って、手を組んだ上に頭をのせた。「わけわかんないな」
「そっちこそ。いきなり好きだなんていって。
順番も違うし」
その言葉に、海斗は微笑んだ。
「だから、泣いたの?」
その言葉には皮肉も何もなく、純粋に優しかったから簓は…思わず赤面した。
そうなのか?
だから俺、泣いたのか?
あんな風にされるより早く言葉を貰っていたら…俺は…。
海斗の指が、そっと簓の頬に触れた。
「好きだ」
不意に苦しくなる胸。
「俺は…男…だから」
「だから?」
その長い指が、綺麗な指が簓の首筋を掠めた。