ちゃんと抱き締めあって、ちゃんと見つめ合った。
全ての行為が必然で、胸の高鳴りも吐息も微笑も不可欠だった。
ひとつになるということは…きっと気持ちが相手のなかへと流れ込んで溶け合っていくことかもしれない。
簓の呼吸と海斗の呼吸とが混じりあって体温も境目がなくて。
時折、身体を離して見つめると怖くなるくらい優しい目とかち合う。
簓は目を逸らした。
誰からも必要とされなかったこれまでの人生が変わってしまった。
海斗は不思議だった。
誰かを必要とするなんて思ってもみなかった。
二人とも怖くて、二人とも幸せだった。
「簓」
呼ばれると熱くなる。
胸が痛くなって、泣きたくなる。
恋なんてもうしないと思っていた。
裏切られて辛い目にあうだけだから。
簓は首筋にキスされながら喘いだ。
しかもこの人に恋しちゃうなんて。
男で、時々信じらんないくらいなげやりで自己中なのに…。
でも…そう、この人は…信じられる。
少なくとも嘘がないから。
簓は海斗にしがみつき、今度はまっすぐ見つめた。
どうしよう…俺、きっと…
自分で思っていたよりずっとこの人が好きだ。