ザザ
ザザザザ
「簓!」
いきなり大声で呼ばれた簓はシャツがまだはだけているにも関わらずリビングに飛び込んできた。
「ど…何?」
ただならない海斗の表情に怯えた眼差しを返す。
その簓の耳にも「音」は聞こえた。
「何…この音」
ザザザザ…
ザザ
ラジオのノイズのような、不快な音。
小さな、耳を澄ませてやっと聞こえる程度の音だ。
どこか不安を煽る不気味な音。
「わからない、外から聞こえるみたいだ」
「外から…」
暗闇の変化ない外界に訪れたその音は、少しずつだが確実に大きくなっているようだ。
二人は顔を見合わせた。
先に口を開いたのは海斗だった。
「様子見てくるから、お前ここにいろ」
「嫌だ」
間髪いれずに答えた簓の目をみて、海斗は微笑した。
「わかったよ、おいで」
差し出した手を握った簓の手は緊張で少し冷たい。
俺の手もそうかもな。
海斗は自信ありげに見えるよう強く手を引いた。
砂嵐のようなノイズはますます大きくなっている。
もはや耳を澄まさずともはっきりと聞こえるレベルだ
「行くぞ」
簓は小さく、コクリと頷いた。