堕ちる。
ずっと墜ちている。
ふと見上げると、大きな光の亀裂が入っていた。
バラバラと世界の破片が身体の横を通りすぎる。
「簓、これ…夢かな」
ゆったりと胸元に頭を押し付けていた簓はニッコリした。
「そうかもね」
暖かい身体、心を満たす彼への想い。
ゆめ?
那由多の暗闇のなかで見ている不条理な夢?
もしそうなら、なんとかけがえのない夢だろう。
「優しい目だね、海斗…なに考えてるの?」
愛してるって感じているんだよ。
頭をぽん、と撫でた時、海斗はハッと息をのんだ。
癖で必ずつけていた腕時計が…。
針が逆にぐるぐると回っていた。
「どうなってるの」
時計は左回りに物凄い早さで針を戻している。
真の暗闇だった周囲も黒から灰色、濃紺、藍色、紫、青…と変化し始めた。
なにかが確実に待っている
「海斗」
簓が見上げたその瞬間、時計は10時5分を指し示し。
白。
世界は白になり。
全て消える。
最後に見たのは簓の瞳。
その、瞳。
愛してる、と感じさせてくれる…瞳。
そして
閃光だ。