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さよならは五分前 32

にゃんこ 2011-01-26投稿
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堕ちる。

ずっと墜ちている。
ふと見上げると、大きな光の亀裂が入っていた。

バラバラと世界の破片が身体の横を通りすぎる。

「簓、これ…夢かな」

ゆったりと胸元に頭を押し付けていた簓はニッコリした。

「そうかもね」

暖かい身体、心を満たす彼への想い。

ゆめ?
那由多の暗闇のなかで見ている不条理な夢?

もしそうなら、なんとかけがえのない夢だろう。

「優しい目だね、海斗…なに考えてるの?」

愛してるって感じているんだよ。

頭をぽん、と撫でた時、海斗はハッと息をのんだ。
癖で必ずつけていた腕時計が…。

針が逆にぐるぐると回っていた。

「どうなってるの」

時計は左回りに物凄い早さで針を戻している。

真の暗闇だった周囲も黒から灰色、濃紺、藍色、紫、青…と変化し始めた。

なにかが確実に待っている



「海斗」



簓が見上げたその瞬間、時計は10時5分を指し示し。



白。



世界は白になり。








全て消える。



最後に見たのは簓の瞳。





その、瞳。


愛してる、と感じさせてくれる…瞳。




そして

閃光だ。

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