「久波くん、どうしたの?」
「こっちのセリフだよ。藍原のそんなツラ、初めて見たからさ」
クラスの誰も、友人ですら気付かなかったことに、彼は気付いていた。
それだけでリルナは泣きそうになった。
「…なんか、あったのか?」
全て話したかったが、バイト先の話としては上手い例えが出てこなかったし、なぐさめてもらってはただ甘えているだけになる。
「なんにもないよ。久波くん、ヘンなの」
「そ、そうか?」
自分のカンが外れて恥ずかしいのか、蹴人は少し顔を赤らめた。
リルナは胸の奥がきゅうっと締め付けられたが、
味の分からないタコさんウィンナーを口に入れて誤魔化した。
「藍原、たまに疲れてるからさ。なんか力になれるなら、言ってくれ」
「うん、ありがとう。…私、ときどき疲れてるみたいな顔してるかな…」
「なんつーか……たまにあさっての方向を見つめてる」
「あさって…」
二人は笑いあった。
そしてしばらく無言で食べすすめてから、
二人は太陽以外なにもない、
青い青い天を仰いだ。
「あさって………か」
「その眼だよ…」
蹴人が少し真剣にリルナを見つめて言った。