「えっ…」
「自分だけどっか遠くにいるみたいな…
その眼だよ」
「そんなこと…」
――見透かされている―
蹴人にはいつか全て、ばれてしまう。
ふとリルナにそんな思いが過ぎった。
「じゃあ、もうしないもん」
「そうしてくれ」
「え?」
「…………寂しいんだよ、その眼」
「…?」
「お前、案外みんなから心配されてること、自覚しろよ」
「久波くん」
言い残して彼は去っていった。
蹴人の顔が真っ赤なのを見てしまったが、
リルナは彼の言葉の端々から伝わる優しさに、
無意識の涙を流していた。
マスターへの恩返しが辛いなんて思ったことは一度もない。
今日は、昨日の失敗で落ち込んでいただけ。
そのつもりだったのだろうか。
ひょっとしたら、
体がもう限界なのだろうか。
心がもう病んでいるのだろうか。
リルナ自身、分からなくなっていた。
「久波くんのばか……」
リルナがもう一度見上げた空は、変わらずに、どこまでも青だった。