空がオレンジに染まり始める頃、
リルナは帰り支度を始めていた。
「藍原、いいか?」
隣のクラスの男子生徒だった。
「なに?」
リルナはあまり話したことがないが、感じの良い男子だと思った。
噂では確かサッカー部のレギュラーで、
同部の女子マネージャーと交際していたとかいなかったとか。
「あっ藍原、俺と付き合ってくれ!」
「え!?」
リルナはまさかの申し出に目を丸くしていた。
容姿のせいでいじめはされたが、告白されたことなど一度もなかったからだ。
「え!や!だって!私だよ!?ぜんぜん、私なんかと…勿体ないよ!」
「藍原じゃなきゃ、だめなんだ」
何故かその言葉に、妙に心を締め付けられたリルナだったが、
きちんと丁寧に、交際は断った。
「あ〜…びっくりした」
―――藍原じゃなきゃ、だめなんだ――
(お客さんも、そうなんだ………。
私目当てで来てくれている人からすれば、私じゃなきゃ、だめなんだ…)
リルナにある決意ができたのだった。