放課後。
俺には遠目からでもわかるよ。
ほっそりした後ろ姿。
シャンとした姿勢。
着崩さない学ラン、生真面目さが滲む歩き方。
気づくなよ…。
いま振り向くなよ。
静瑠が気づけば、悟られないように想いを逸らさなきゃならなくなる。
静瑠が冷たい廊下の壁に背中あてて、読みかけの本を開いて読み始めた。
多分、エラリークィーンかアガサクリスティ。
俺を待ってる、姿。
変態だな、と思う。
男が、しかも友達だと思われてるこの俺が。
こんな想いで見つめているとは。
切り取ってください、神様
俺に気づいてないアイツを切り取って、閉じ込めて、俺にください。
やばいね、俺。
相当病んでる…。
「琉聖!」
ばんっと背中を叩かれた。
あんまり驚いて、俺は鞄を取り落とした。
「…んだよ、お前か」
安東連理(れんり)
コイツ、最近本っ当に邪魔なんだ。
中学から仲良くはなったんだが…どうも、オカシイ。イイヤツなんだけど…。
「なに、みてんの?」
「別に、なんも」
ほら、こういう時のコイツの顔…。
訳知り顔で、俺を窺う。
「ふうん」
…
なんだよコイツ!