リルナは自分が涙を流していることに気付かず、マスターに訊ねた。
「私………わたし……、
私は…………問題外、ですか?」
「リルナちゃん…」
最早、最初の印象とはかけ離れたマキが言葉を継いだ。
「リルナちゃん、今日は私がやります」
「!!」
ぴしゃりと言い放ち、
店側の入り口は、
リルナの眼前で閉められた。
リルナはその場に泣き崩れた。
店の中には苦い顔をするマスターと、静かに涙を流すマキがいた。
「リルナちゃんは、
急いで成長しなくてもいいの。
周りに迷惑をかけて、
たくさん泣いて、
嫌になるほど落ち込みなさい…。
あなたは、私たちが守るから…」
「マキ、でも無茶よ!今日だけで三百人よ!?そ、それに……。
昨日、さばいた明日の、五日連続最終日の整理券…三百五十枚以上よ……」
「ろ……六百五十人よね……。
二日で…」
マキの細い体が小刻みに震えていた。
「大丈夫よ…!私は南條(なんじょう)マキ……!この店のNo.1の……女っ………………!」
口を開けば開くほど、
体は震えて、涙が溢れていた。
マキはリルナへの謝罪と、
そして、恐怖から涙していた。
自信など彼女には微塵も無かった。
いつもそうだった。
No.1などプレッシャーでしかなかった。
しかし、スタイル、根性、年齢、やる気など全てを評価して、
今この店にマキ以上の従業員はいなかった。
「さぁ…準備してくるわ」
マキは店の奥に消えた。