試合当日まで風邪を理由に学校を休んでいたリルナは、その間にマスターたちに蹴人の試合のことを告げていた。
「これでヨシ!」
リルナは、着なれないフリルの付いたワンピースに着替えさせられていた。
化粧や髪型までマスターとマキが整えてくれていた。
「フフ、可愛い。本当にお人形さんみたい」
リルナは玄関先でもう一度髪型の最終チェックを受けていた。
「いい?気を使うことなんてないワ。
学校には私たちから上手く説明しておくから。
あなたが店のこととか、大事なことをそのコに伝えたいなら、何も隠さなくていいのヨ?
と言っても信じてもらえないだろうけれど……ああ、そのときは私たちを紹介したって構わないワ」
「マスター、リルナちゃん困ってるわ」
リルナは涙をこらえて、笑顔で『行ってきます』と口を動かした。
「ふぅ。行ったわネ」
「マスター、あと少しなんでしょ?
前の借金」
「エエ。こんなことにならなければ、返せていたわネ…。せっかくマキも肩の荷が降りたところに…」
「じゃあもう一回、その荷物背負うわ」
マキは以前の様な大人びた真剣な顔つきで、リルナの後ろ姿を見送っていた。