「あ!!やっぱりリルじゃん!」
「リルナ〜〜!!」
一週間も休んでいた自分を、何事も無かったかのように友人は出迎えてくれた。
喋れなくなったとメールで告げてあり、
今日は蹴人の試合に付き合ってくれるとまで言ってくれたのだった。
「うわぁ超可愛い…。久波ってロリコンかな?」
顔を真っ赤にしながら、首を横に振るリルナを、友人二人は笑ってなだめた。
「はは、冗談冗談。さぁさぁ。会場に入ろ。久波が待ってるよ〜」
「なんか私が緊張するよ!」
声が出ないことなど、最早問題では無かった。
――蹴人には、
彼にだけは
『ありのまま』を
伝えたかった、ただ
信じて、受け入れてもらえるだろうか――
蹴人の試合はまだ二試合ほど後だった。
リルナがみんなの分の飲み物を買っていると、隣に試合前のどこかの学校の選手たちが集まっていた。
邪魔にならないように回り道して帰ると、
リルナの学校の控え室があった。
(ウソ……!)
控え室からは話し声が聞こえていたが、
しばらくして静まり、
部屋から何人か選手が出てきた。
そして蹴人がユニフォーム姿で出てきた。
「藍原…!藍原!来てくれたのか!」
リルナは笑顔で頷いた。
携帯電話のメール作成画面で、
声が出ないことを説明した。
『一時的なショック症状』ではなく、『風邪』と置き換えた。
試合後に、本当のことを話すと決めていた。
「そうか……。一週間も休むんだから試合なんて見にきてくれないって思ってた。とにかく、元気そうでなによりだ。見ててくれ。必ず勝つから」
ユニフォームのせいか、久しぶりにあったせいか、蹴人は大人っぽく見えた。