「…………翔梧が…クスリをやっていたんだ…。蹴人たちなら、もう分かるね」
蹴人は頷きながらリルナを心配そうに見つめた。
彼女は涙を溜めながら、話を呑み込もうと必死だった。
「…………だが、もうその時には君が産まれる間近だった。僕も結婚していて、蹴人も産まれそうだった。
レオナは翔梧が変わっていくことを恐れ、逃げた。
いや、君を守るために逃げたんだ。
出産してなお、彼女は翔梧から逃げ続けた。しかし、そのうちに暴力的な翔梧を止められるのは自分だけだと思ったらしい。
彼女は、君の五歳の誕生日に、君を棄てて…翔梧に会った。
そして………レオナは翔梧を…。
その後、レオナ自身も自ら命を絶った…」
リルナは込み上げる声にもならない呻きのような嗚咽を、両手で抑え、涙をこぼした。
蹴人も震える手で、リルナの背を擦った。
「蹴人にサッカーをやらせたのは、
勿論、サッカーを好きになって欲しかったこともあったけど、
藍原…龍弥の情報を知りたかったこともあったんだ。
藍原という名字の子供はいないかとか。
あいつはサッカーを何より愛していたから。子供にサッカーをやらせるっていうのが口癖だった…。
まぁ、男好きだったから。
どういう生活をしていたか想像し難かったけど、良いヤツだった。
そして………蹴人の選んだ学校に君がいて、選んだ人が君だった…。
何もかも語るしかなかった」
蹴人の父親は厳しい表情で、告げた。
「…………藍原さん。僕は今、警察に勤務しています。
龍弥の店を調べさせてもらった…。
君が龍弥に預けられる前から、
あいつは………違法な風俗店を経営していたんだね…」
「なっ…!親父!?」
「……………」
「……こうなると、覚悟していたんだね?」
リルナは頷いた。