二人は最上階の洒落たナイトバーへ入った。
窓際のカップル席へ案内された。
店内には数組のカップルが思い思いの時間を楽しんでいた。
店内に流れている曲はピアノではなく、単なるBGMのようだ。
『ひとみ、いないじゃん』
『イェーイ引っかかったなぁ』
『マジかよ〜っ』
『ウソ、ウソ。今休憩じゃないかなぁ』
『ったく…もう…』
二人はグラスを傾けながら、高校時代の話で時間を流した。
たまに、まどかが寄っ掛かってきたり、ほっぺ触ったり、ちょっかい出してきたが、上手くかわしていた。
店内の照明が少し落ちた気がした。
『あっ始まるよ』
まどかが反応した。
ピアノに緩いライトが当たり、客席を縫うように一人のドレス姿の女性がピアノに向かって歩いてきた。
他の客は、我関せずの雰囲気で会話に夢中だが、俺達二人はその女性を、薄暗い中、目を凝らしながら追っていた。
そのシルエットが近くまで来たとき、俺は息を飲んだ…