男と連理の間に、何か…言い知れない電磁波が通ったようにみえた。
俺は直感的に気づいた。
コイツだ。
コイツが…連理の…家庭教師だったやつだ。
女だと思っていた。
いや、連理はそう思わせていた。
けど、間違いない。
男は、今まで見たことがないくらい「洗練」されていた。
身長が高いやつにありがちながさつな動作は微塵もなく、超然としている。
それでいて、清潔さよりも…全身から色気が漂っていた。
なよなよしてはいない。 ただ、仕草のひとつひとつが…単純な動きが、見るものを惹き付ける。
俺は、見惚れつつ…その全てが瞬時に嫌いになった。
唇に浮かぶ嘲笑的な笑みも笑わない目も嫌悪した。
「この学校に正式にお世話になります。君たちとはクラスが違うようだけどね?残念だよ、安東君」
名前を呼ばれた連理は、微かにビクッと震えた。
反射的だった。
主人に呼ばれた飼い猫のように。
その連想に、俺は一層嫌気がさした。
まったく、そのイメージが当てはまっている気がして
「帰ろう、連理」
袖を引っ張る。
連理は目を逸らすのが試練ででもあるかのように大袈裟に振り返った。