「庄野碧先生、本当に凄い先生だよ」
無垢な顔で、休み時間、興奮気味に飛び込んできた静留に俺は曖昧に頷いた。
碧(ミドリ)か、女みてーな名前。
内心悪態をつくも、その名が実は似合うことに余計に苛立った。
「もうクラスメイトの名前全部覚えてるし…優しいし…女子なんか完璧まいあがっちゃって」
ふーん。
けどご当人は女子に興味ないんじゃないんすかね?
小学生だった連理を仕込んでた男。
気持ちを弄んだ、それでも想いを残していった。
完全に変態だ。
妖しい、いかがわしい、禍々しい。
それでもいいと思わせるくらい…人を虜にする男。
あの目。
連理をいたぶることに悦びを感じていた。
それでいて…
そう、癪なことに俺でさえ…嫌悪しつつ、危うい魅力を感じた。
何も知らない静留は無邪気に話を続ける。
連理は警戒した野良猫みたいにジッとしていた。
「俺、あんな完璧な人、見たことないや〜、気さくなのにちゃんと一線引いててさ…気品みたいなのあるんだよ。ちょっと憧れちゃうや、女子じゃないけど」
あらまあ。
静留、あっさり陥落。
俺は気が気じゃない。
連理は…無表情。