カメラで撮りながら、誰も来ないこんなところで一体何を考えてるんだ、とやきもきしている俺。
約束があるから中に入ることもできない。
静留には何か考えがあるんだろうが…。
庄野をなめたらいけない、アイツは…性悪だぞ!
「で、どうしたいんだい」
庄野はニヤニヤと微笑しながらこうまで嫌らしく見えるのが不思議な動作で立ち上がり静留の肩に手をのせた。
「俺は…わかりません」
話の方向がわかんねーのはこの俺だ!
なんで盗撮なんかしてんだよ俺は。
「水島君、君は非常に魅力的だよ」
なんだ、なんだ、急に。
静留は固唾を飲んで固まっている。
「先生…」
無防備な顔で見上げる。
ばかやろ、やめろったら、なんで逃げないんだ!
「綺麗だね」
おいおいって!
時計は35分…。何があろうとも絶対に、と言った静留の真剣な顔を思いだし辛うじて理性を保つ。
踏み込んで静留をひっさらって庄野から引き離したかった。
とうとう、庄野はあの長く繊細な指を静留の首筋に這わせ、見下ろした。
静留は光に魅せられて轢かれてしまう猫のようにまたたいた。