午後7時。
新入社員歓迎会
と銘打たれた飲み会に、俺たちは半分強制的に連れ去られる。
そーゆーもんだな、社会ってのは、と納得。
「あたしあんまり飲めないんですよう」
と川田女子が早速先輩男性職員に媚びを売る。
それを内心、忌々しげに見ているに違いないお局様的な御姉様方。
冷静にみれば、俺は川田女子を「可愛い」と感じねばならないはずだ。
実際、彼女は可愛い。
髪は緩くカールしていて、睫毛は巧妙な手際で三倍は増している。
ふっくらした唇は充分色っぽくスタイルも悪くない。
のに。
俺の目線は彼に吸い寄せられる。
雨はいつのまにか上がっていたけど、しっとりした空気はまだ残っていて、彼の周りに纏わりついているみたいだ。
既に彼をマークしているのか2人の女子社員に挟まれている。
俺の横には世話好きな先輩しかいないというのに。
人ってあからさまだよね。
居酒屋の二階を借りきって行われた歓迎会の席。
俺は意識的に彼の隣に座った。
ぴったり寄り添っていた女が手洗いに行った隙に。
「僕、こういうの少し苦手なんです」
彼は小声で囁いて苦笑した
俺は頷いた。