「ではあ〜、新入社員の明日からの頑張りに期待して乾杯〜!!」
40は越えてるであろう、小太りな先輩の音頭で宴会は始まった。
「泉堂君てスッゴい可愛いね〜♪」
暫く時間が経過していくにつれ、女子社員が解りやすい関心を彼に向け始めた。
俺が感心したのは、そういうどうしようもない言動に対し、否定も肯定もなくただ、ニッコリと微笑んでいる彼の態度だった。
必要最低限の受け答えしかしない俺たちを酒のまわった連中は放置しはじめ、内輪の話題で盛り上がり出した。
彼をみやった。
透き通るくらい色白な肌にやや赤みが差している。
彼は周囲の喧騒とは無縁な静かな瞳を俺に向けた。
途端に心臓が跳ねる…ときめくという感覚が久々に体を巡る。
「綺麗だな…」
その言葉は迂闊にも唇から勝手に零れ出てしまった。
心に留めておく筈の気持ちを酔いと戸惑いとが揃って押し出してしまったように
俺は唖然として、自分の言葉を吸い込んでしまいたくて自失していた。
動揺して彼と目を合わせると、彼はゆっくりと呟いた
「ありがとう」
俺は顔中に血液が集中していくのがわかる。
つまりこれを
赤面という。