かろうじて救われたのは他の連中には聞こえなかったらしいということ。
俺は動揺しまくって、ウーロンハイを啜った。
「いや、あ、そんなんだと、も、もてたんじゃないかなーとか」
うわあ、俺こそくだらねえ〜!!!
「いや、全然です」
んなわけなかろうが、と思いつつウットリと魅了される俺。
長い指先で細いグラスをなぞる仕草が艶(エン)だ。
その指を俺の指に絡めたら…ほんのり色づく頬に触れたら…危うい妄想は酒の力で余計に掻き立てられて苦しい。
当たり障りのない会話に無理矢理持っていき、さっきの言葉は酔いが醒めると共に忘れてくれることを願った。
不意に彼は時計を見、微笑んだ。
「藤原さん、僕はそろそろ帰ろうかと思うんです。
終電も間近ですし…でも一人じゃ出るのも…」
言いたいことは解ったのでこれ幸いと一緒に立ち上がった。
川田女子はもう他の先輩と帰っていたし、半数に減っている。
もう義務は果たした頃合いだろう。
まだ居ろよ〜と絡む先輩らに頭をさげて店を後にする
「ふう…夜風が気持ちいいなあ」
奇妙な視線で俺を見つめる彼を感じていた。