「中央学園……都市…専属、デ…バッガー?
御ノ瀬(オノセ)湧一(ユウイチ)」
「うん」
「よく分からないけど…ここ、学園都市じゃ…」
「ここのことじゃないんだ。
いずれどこかの小さな学校同士を、
一つに出来たらって…
まだ想像のはなしだよ。
小さな学校をいくつも集めたら、
そこにはきっと街ができる!っていう、
想像のね」
「デバッガーって…?」
「その街に何か困ったことがあれば、
解決する役かな」
「あなた…頼まれてるって…」
「うん。ある日選ばれた。中学卒業して、直ぐに」
「ぐ、具体的にどんなことしてるの?」
「今は俺たちの学校をモデルケースにして、訓練中。具体的には…まだ何も。でも近いうちに指示があると思う」
現実離れしたことを淡々と語る彼に、
わたしは距離を感じずにはいられなかった。
この人もまた、現実に嫌気がさしたのだろうか…。
しかし、その瞳はぶれていない。
「キミは?名前、そろそろ教えてよ」
ぶれない瞳は、にこっと笑って、
わたしを促した。
「……新崎(シンザキ)……紗弥(サヤ)」
「サヤか…!好いね、キミらしい名前だ!」
「…そう?わたしは全然合ってない気がして、違和感だらけ…」
「そんな気がしてるなら、今はキミらしさが少し足りなくなってるんだ。大丈夫、自分らしさは直ぐ取り戻せるよ」
「…?」
「サヤ、よろしく!今日からここはもう一つのキミの家だ!」
その得体の知れなさと、強引さに、
わたしは正直、一瞬、帰りたくなった。
けれど、
帰る場所が無いから来たことを思い出すと、思わず笑ってしまい、彼の握手に応えてしまった。
こんなに訳が分からなくて、
こんなに意味不明で、馬鹿馬鹿しくて、
こんなに素敵な景色の部屋が、
今日から、わたしの家だ…。