先生は脚立から降りながら、
「こっちはまだ時間が掛かるからまたにするよ。話し聞くぞ。」
顔をのぞき込むにようにして先生は軽く身を屈めた。さわやかだけどクラスの男子にはしない大人の香りが混じった整髪料に、私の体は熱くなってきた。
「いじめか?」
「違います!」
「恋の悩みか?はははっ」
どうしよう…やっぱり言わないほうがいいのかな…
「恋って言うか…私…先生の事が…」 「ストップ。」
私の切羽詰まった表情で気付いたのか、先生は突然険しい顔になって私の告白を止めた。
「告白は自由かも知れない。でも彩はそれから先どうするんだ?俺が断れば素直に引き下がれるのか?」
冷たい。どうしてそんな言い方するんだろう。
「先?分かりません…私はただ…」
頭の中が混乱してきた。黙り込んだ私に先生は少し表情を和らげて言った。
「いいか、彩。立場的な事は言わなくても分かるよな?それに俺は教師である自分しか見せてない。彩が思い描くような人間じゃないかもしれない。」
「でも…好きなんです!先生の事ばかり考えてて…」
言葉の途中で先生はいきなり強く私の腕を引いて、準備室へ突き飛ばした。