わたしの通う高校は、わたしの住む町から少し離れている。
わたしは毎朝、学校のみんなより少し早起きをして、電車に乗って通学している。
田舎と言えば田舎で、大都会という格好良い表現はあまり似合わない、そんな町。
車両が空いている早朝の電車には、いつも『彼』が乗っている。
同じ高校の制服を着た、名前も知らない男の子。
『彼』はいつも、うとうとしながら、茶色いカバーのしてある小さな文庫本を読んでいる。
その姿は一見、頭の良さそうな優等生だけれど、よく見るとたまに眠っている。
目線を本からずらすことは無い『彼』を、わたしはずっと見つめていた。
それが、高校に通い始めてからの、わたしの日課だ。
(でも一度も学校で見かけたこと無い気がする…。)
僕の通う高校は、僕の住む町から少し離れている。
僕は毎朝、学校のみんなより少し早起きをして、電車に乗って通学している。
都会と言えば都会で、大都会かと言われるとそういう格好良い感じではない、そんな町。
車両が空いている早朝の電車には、いつも『彼女』が乗っている。
同じ高校の制服を着た、名前も知らない女の人。
『彼女』はいつも、にこにこしながら、こっちをずっと見つめている。
目線を僕からずらすことは無い『彼女』を、僕はずっと恐怖していた。
それが、高校に通い始めてからの、僕の日常だ。
(でも一度も学校で見かけたこと無い気がする…。)