「夢乃、これ、悪ィんだけどさ、下の教室行って返して来てくんない?」
「望くん、頼むよ!」
クラスメイトから望に手渡されたのは、男性用避妊具。
パッケージを見ただけではそれとは分からなかった望は、言われるがまま、指定された教室に向かった。
その人に返して欲しいと言われた女子生徒の名前を呼んだ。
「え?あたしだけど……」
怪訝な表情で、その女子生徒は望を見た。
「これを返して来てって…」
「きゃああ!!」
「やだっ!!」
「何してんの!この人!!」
一瞬にして昼休みの教室に悲鳴が溢れた。
望には理解出来ないことが目の前で起きていた。
「ちょっと!!早く帰って!!」
「やだ〜、最悪だね…」
望は、走って教室から出て行った。
知らない教室に行き、知らない女子生徒たちから悲鳴をあげられ、望は涙を堪えきれなかった。
今までクラスメイトにこういうことをされたのは何回もあった。
しかし、今回で望は、他のクラスにまで変な噂をたてられると思った。
「……」
「……!!」
ふと、顔を上げると、見知った顔がそこにあった。
「…あ…!……あ…!」
「……あ…!!」
お互いに口はパクパクと動くばかりだった。