「特別進学クラスにもそういうことあるんだね……」
お互いに、学校の外の自動販売機で飲み物でも買って落ち着こう、ということになった。
外は暑かったが、何か校内よりは空気が良かった。
「でも…びっくりした。きっとこのまま電車の中でしか会えないと思ってたから…」
「僕も……」
「…アレ。わたしの顔見て分かったってことは、もしかして毎朝見られてた?」
「あなたが…保月さんが眠り込んだ時とか、たまに起こしたりしてました……」
望は申し訳なさそうに笑った。
またしてもサヤの顔は、赤らんだ。
「なかなか起きないから、僕も電車からギリギリ出たことが何度かありました」
サヤはその時自分は、そのまま駅を寝過ごしてしまったんだろうと、思い当たった。
「あなただって……夢乃くんだって、眠り込んだ時に、本を落としたりしてた!」
二人は、今日まで喋れなかったことを、授業があるのも忘れ、語った。
適当な理由をつけ、二人は早退した。
西の方から、空がオレンジ色に染まる頃、二人は帰りの電車に乗っていた。
「そっか〜、本読む時間も無いんだ」
「代わりに勉強なら多少できますから」
「多少って…。嫌味に聞こえた!」
帰り際に、お互いの連絡先を交換した。
「……いじめる奴等なんか、相手にしないで良いんだからね?」
「…はは。ええ、分かってます」
じっと瞳が重なり合う。
「明日の朝、また…」
「うん……」