ついに喋ってしまった。
お互いの連絡先まで入手した。
二人は自宅に戻って、
今日起きた奇跡を反芻していた。
そして、焦っていたのは望だった。
自分がいじめられているからこそ、
彼女と積極的に関わろとは思わなかった。
彼女を巻き込むこと¨だけ¨は、避けたかった。
つまりだから、恐怖していたのだ。
毎朝の彼女の、誘うような瞳に。
自分の理性が本能に負けることを、
恐怖していたのだ。
――思った通りに、魅力的だった。
サヤもそう感じていた。
やっぱり気弱で、
しかしきちんと意見を持っていて。
守ってあげたくなる。
そんな魅力があった。
サヤの理性が本能に負けてしまっているとは、サヤ自身も分かっていなかった。
だからこそ、翌日に起きる出来事を、
誰にも止められはしなかった。
「昨日、夢乃望くんに下の教室に行くように言った男子、誰?」
昼休みになり、望が昼食を買いに自分の教室から出て行った時、サヤは彼をいじめている男子たちを特定しに行ったのだった。
三、四人の男子がサヤの前に立った。
顔はみな、不気味に笑っていた。