「俺らさ、もう別れた方が良いんじゃないかな…」
一個下の彼、祐輔の口から出た意外な言葉にあたしは動揺を隠せなかった。
「なんで?」
「連絡トカ全然とれねぇし、俺よくわかんなくなってきたんだ。マキのこと好きかどうか」
あたしが大学に合格して間もなくの三月、あたしたちは終わった。
それから二年。
あたしは毎朝同じ電車で大学に向かう。今日も何気なくエスカレーターで改札に向かうとあたしを抜かそうとした一人の若い男が話し掛けてきた。
「アキ?アキだろ?久しぶり!」
「…祐輔?」
エスカレーターであたしより一段上に乗る笑顔の祐輔がいる。
「大学どう?」
同じ電車に乗り、祐輔は楽しそうに話している。
「まぁまぁかな。祐輔は工業系だったし専門かな?」
「ピンポーン!さすがアキ!」
電車に揺られる約一時間半の間、あたしと祐輔はとりとめのない話をし続けた。
なんだか懐かしい。付き合ってた頃に戻ったみたい。あの頃はこんな風に電車に乗って色んなトコ行ったな…。
「アキ、携帯教えてよ。別れた後にお互い変えて知らないだろ?」
「あぁ、うん」
「たまに会って話そう。今日すげぇ楽しかった」
祐輔はあたしのアドを入力しながら言った。
あたしも楽しかった。
そんな簡単な言葉も言えぬままあたしたちはバイバイした。