ゲンさんは優しく声をかけてくれた。
「奢りは一杯だけな」
苦笑いしながら祐輔はゲンさんに梅酒を頼んだ。
「梅酒かよ。この店で一番高いのにしろよな〜」
と文句たれるあたしに祐輔は
「ばーか。ゲンさんが自分で作ってる梅で作ってんだぞ〜超旨いし」
一口飲んでみると確かに。なんだか懐かしい味もした。
「アキさぁ〜今彼氏いんの?」
イキナリの異性としての問い掛けにあたしはお酒を詰まらせた。
「ゲホッ、オホッ、ゴホゴホ…はぁ?」
涙目になりながら言うと
「イヤ…今日さ、久々にアキのこと見て…なんつぅか…惚れちゃって♪♪」
とお絞りを渡しながら軽く言う祐輔にあたしはなんと言葉を返せば良いのかわからなかった。
あたしは二年前に祐輔と別れてから彼氏は出来たものの、心のどこかで祐輔のことを想っていた。きっとずっと祐輔のことが好きだった。
「祐輔…あたしは…。……てかマジに言ってんの?酔った勢いとかじゃない?」
あたしが眉間に皺を寄せながら言うと
「ちげぇよ!!俺は…マジで…」
と真面目な祐輔の顔になった。
…本気だね、その顔。
目が細いくせに真面目な顔になるとその細い目を少し見開く。別れ話されたときと同じ顔。
「あたしも…祐輔が好き。別れてからも…ずっと好きだった…」