まるで予言者にでもなったかのように
「……俺…コンビニ行ってたって言ったでしょ?その前に出掛けてたんですよ」
俺は佐木が何故涙を流したのか
分かった気がした
「…朝、知らない人が来て…誰だと思います?」
佐木は無感情に眉ひとつ変えず天井を見つめながらぽつりと言った
「"母親の再婚相手"」
「…知らなかったのか?」
「そりゃ16から音信不通ですから。いつからとかも聞かなかったし…いきなり何の連絡も無しに現れて、へーそうなんだって最初はそんぐらいだったんですけど」
"亡くなったんだ"
「……」
「もともと体悪くて入院してたらしいんですけど…最期は眠るように逝ったって。」
現実でも本当にそんな風に言うんだなー、とか佐木は茶化すように笑った
泣いているのに。
「部屋を整理してたら手紙が見つかったって…わざわざ俺んとこに持ってきたの。」
「手紙…?…住所は?」
「ない。知らないだろうし…俺の名前だけ。だから探すのすげぇ苦労したとか言ってた」
「2通あってさ。ひとつは結構ボロボロでもう1通は入院してる時に書いてたみたい」
「うん」
「…
捨てるつもりだった。」
長い沈黙のあと佐木はぽつりと言った。
「だってすげぇ今更だし…読んで何かを知って後悔するくらいならいらないって…家のゴミ回収場にいたらさ、黒川さんが来たの。そりゃあもうすっげぇ剣幕で」
「…悪かったな、顔は生まれつきだ」
「ははっ…でも俺に会いに来たのに俺に全く気付かないんだもん、笑っちゃうよ」
言われてその図を想像してみるとかなり恥ずかしくなった。情けない…
「…?なに」
佐木は俺の頬を指で撫でてきた
「…分かる?
…黒川さんに、止められたんだよ」
とくん。