「丸くなったって事で、
いいんじゃないですか?」
「…え?」
「今の黒川さん、俺結構好きですけどね」
「…何言ってんだ」
軽くあしらって
「俺、フェミニストですから」
「はっ、ただのチャラ男の間違いだろ」
少し安心したように
笑って
ね、今の俺の言葉
「…原島」
「はい?」
気付いてよ
「ありがとう」
「…」
そんな言葉が欲しかったわけじゃない。
「どういたしまして」
ただ、笑ってて欲しかったから。
「所長」
「ん?」
「お幸せに」
立ち込める紫煙の向こうで彼は照れくさそうに目線を反らしながら
小さな声で"ああ"と返事をして扉の向こうに
彼は消えた
「ありがとうかー…」
報われない感情なんて
気付かないフリもできたのに
「俺…結構本気で好きだったのかなぁ」
今頃気付くなんて。