久間は一層神妙な面持ちを深めた。
「ただねぇ、万が一うちの奉公人が突き落としたとなっちまうと……」
「うまくないな」
「だろぅ?」
「なぁ、久間よ。もし下手人が紫乃だったとしてだ、見つけたらどうする?」
久間は腕を組み考え込む。
雨戸の隙間から斜陽が射し込み、舞い上がる埃が光の筋を示している。あまりにも静か。そのせいか、お互いの息遣いすらも聞こえる。布団を被りながら右向きに横たわるお理津の目の前、同様に向かい合う紫乃の顔。斜陽が産毛輝く鼻梁から目元へとうつろい、眩しそうに一重瞼の目を細めた。投げ出された小さな左手に、お理津は左手を包み込むよう被せた。
「くす……」
声を立てずに笑う紫乃。瞳は真っ直ぐお理津を見詰めている。
「静かだねぇ」
気だるそうな声。半ば下敷きとなっている右手が紫乃の顔を触り、指先でその前髪を玩ぶ。
「綺麗な髪……」
照れくさそうに、はにかむ紫乃。
「肌も綺麗。あたしみたいに汚れてないよ」
「でも私、色気無いし」
今度はお理津がはにかむ。言葉を発する度に互いの息が互いの顔に触れた。やがて二人の左手はその指を絡め合う。斜陽は紫乃の小さな耳から艶のある黒髪を撫でて行った。
「あ、だめ、お理津さん……」
熱い吐息は細すぎるほど。
「嫌かい?」
口を真一文字に結びながら、みるみる赤くなってゆくその顔に、お理津は顔を近付けて行った。
「んっ」
唇が重なり合い、小さく体を震わせた紫乃。布団が蠢く。
「ここ、自分で弄ってひとり遊びした事、あるかい?」
微かに頷く。
「誰かに弄られた事は?」
「あっ……ん……な、ない……です」
呼吸が荒くなってゆく。
「紫乃ちゃんも、あたしの……」
額と額がくっ付いた。息遣いが混じり合い、その熱く湿った呼気を吸い込む。お互いが手探りの中、布団の中で快楽の闇を泳ぐ。やがて、紫乃も気付かない内に長着の帯が解かれ、小さな胸が露になった。
「可愛い……」
「嫌……。私、まだ、子供だから……」
「もう初花(初潮)は迎えてるんだろう? 立派なおとなの体だよ。それにね、あたしのも……」
言いながらお理津もまた帯を解き、胸を裸ける。比べれば、さして変わりも無し。
「ただあんた、綺麗な色してる」