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夜鷹の床(16)

うなぎ 2012-02-05投稿
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 ここまで濡れた事も、これ程快楽の波に襲われた事も無かった紫乃。自らの股間を弄る指は激しさを増すばかりで、止まらない。お理津もまた、ここまで太いものを、これ程奥まで挿れられた事が無かった。またそれは、一種異様な光景でもあった。

 ガラリ、と、突如開け放たれた戸板に、二人は跳び上がる。
「お前ら、何してやがる!」
「きゃぁぁっ!」
 叫んだのは紫乃。お理津から腕を引き抜き、剥いだ布団にくるまる。現れたのは他でもない、与兵衛であった。
「ひとの寝床でじゃれ合ってんじゃねぇよ」
 むせ返る程に充満した女の匂い。お理津は股を開いたまま、未だ息を切らして雲の上。その有り様を呆れた顔で見下ろす与兵衛。一瞥した後、部屋の隅で縮こまる紫乃の前にしゃがんだ。
「紫乃。お前に話がある」
 紫乃は目を伏せて顔を背けるが、構わず続ける。
「正直に答えろ。お前、美濃屋平吉を川に突き落としただろう」
「……」
「今朝土左衛門が河岸町に上がった。お前、昨夜平吉を送って行ったそうじゃねぇか」
 答えない。
「ただな、久間にしてみれば手前んとこの奉公人が下手人となっちゃぁ都合が悪い」
 紫乃はきつく目を瞑った。昨夜の光景が瞼の裏に甦ってくる。
「どうにもあいつは、事を荒立てたくないと思っているらしい。心配するな。お前がここに居る事は話してはおらん」
 うっすらと目を開ける。
「お前が、やったのか?」
 紫乃は小さく頷いた。
「怖かったんです……美濃屋の旦那が、私に変な事しようとして……」
「変な事なぁ……」
 与兵衛はぐったりと横たわるお理津に目をやる。ならばこれは如何にと。
「とにかくだ。久間はお前を見付けたら他国へ追放すると言っておった。仲買人に売り付けて、どこぞの飯盛り女として一生こき使われるだろう」
 飯盛り女とは街道筋の宿場にいる非合法の遊女である。紫乃は貧しい百姓の生まれで口減らしのために売られて来たが、遊廓ではなく久間の屋敷に奉公したのは、不幸中の幸いであったかも知れない。
「だから、昼間は出歩かない方がいい」
「じ、じゃぁ……」
「ただし、ずっと置いておく訳にもいかん。俺も下士の身ゆえ、傘貼りで小遣いを稼いではいるものの、とてもお前を囲えるような身分ではない。離れた土地で奉公先は無いか当たってはみるがな」
「……体を売りさえすれば、ご迷惑は掛からないんですね」
「紫乃!」

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