紫乃はここに来て後悔した。やはり怖い。棒立ちのままただ俯いていると、見かねた老僧は口を開いた。
「何も案ずるでない。儂はもうこの歳じゃから、勃つもんも勃たん。ただ老い先短いよって、若い身体を拝みたいだけじゃ」
そうは言うものの男の前で裸になるのは恥ずかしい事に変わり無く、帯を解く手が震える。やがて蝋燭の灯に細い足が浮かび上がった。目の前で胡座をかく老僧の顔は近い。
「ほうほう、肌が絹のようじゃな」
満面の笑顔を見せながら自分の頭をつるりと撫でる。はしゃいだ様子がまるで子供のようだと紫乃は思い、少し緊張も溶け始めた。下衣を脱ぎ、そして緋縮緬の腰巻きがはらりと床に落ちれば、蝋燭の炎を揺らす。あまりにも静かで、衣擦れの音だけがやけに際立つ。
「ほほっ、まだ女になりきれておらん小僧のような身体じゃ。穢れてないのう」
膨らみかけの胸と毛も生え揃っていない股間を手で隠し、顔は灯りのせいではなく赤い。
「どれ。もっとよく見せてみなさい」
言うと老僧は股間を隠す手を退けて、小さく盛り上がった恥丘を左右に広げた。恥ずかしげに顔を覗かす新芽が剥かれ、臓腑の入り口が垣間見える。老僧は手を離し、そして合掌。
「ありがたや。山門の奥に観音様がおられるわい。さて、とくと参拝させてもらおうかの」
不思議そうな顔で老僧を見詰めていた紫乃はその場に座らされる。そして今度は老僧が立ち上がり、法衣を脱ぎ始めた。
「なんと、何十年振りに疼き始めたわい」
筋張った腿の間にぶら下がった物が、別の生き物のように見える。
「頼む。この老いた棹を口に含んではくれまいか?」
哀願に近い。汗とも何ともつかない異臭に顔をしかめるも、紫乃はお理津が久間にしていた唇淫を思い出しながら、力なく揺らぐいちもつを口に含んだ。異物感が口の中に広がる。
「おおぉっ、こりゃ久しいのぉ」
紫乃の小さな口の中で肉の塊がみるみる大きくなり、そして固くなってゆく。唇は押し広げられ、鼻でしか出来ない呼吸がなんとも苦しい。
「こりゃ驚いた! まだ儂にもこんな精力が残っておったのか」
「んー……すん……んふんー」
頬が膨れる。紫乃は苦しさに涙目になりながらも一生懸命口を大きく開け、その若さを取り戻した棹を受け入れた。
「こりゃ死ぬ前に今一度、房事を遂げれるやも知れぬわい」
老僧は目を細めて言った。